新社会人向け:お金の不安を解消する現状把握と目標設定の基本
はじめに:お金の不安を解消する第一歩
新社会人として働き始め、収入を得る喜びを感じると同時に、「将来のためにお金を貯めなければ」「何から始めれば良いのだろう」といった漠然とした不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。お金に関する知識が少なく、どのように貯蓄や資産形成を進めていけば良いか分からないと感じるのは自然なことです。
しかし、ご安心ください。お金の不安を解消し、具体的な行動に移すための第一歩は、決して難しいことではありません。それは、「ご自身の家計の現状を正確に把握すること」と「具体的な目標を設定すること」です。この二つのステップを踏むことで、漠然とした不安は具体的な課題へと変わり、解決に向けた道筋が見えてきます。
この記事では、新社会人の皆様が無理なく、確実にお金の不安を解消し、未来に向けた一歩を踏み出すための家計の現状把握と目標設定の基本について、分かりやすく解説いたします。
1. なぜ「現状把握」が重要なのか
現状把握は、お金に関するあらゆる行動の土台となります。ご自身の家計がどのような状態にあるのかを理解せずに、ただ闇雲に貯蓄を始めたり、節約を試みたりしても、効果は限定的となり、挫折に繋がる可能性もございます。
現状を把握することで、以下のメリットが得られます。
- お金の流れの可視化: どこから収入が入り、何にどれだけ支出しているのかが明確になります。これにより、「いつの間にかお金がなくなっている」といった感覚から脱却できます。
- 無意識の支出の発見: 普段意識していなかった小さな支出の積み重ねが、大きな金額になっていることに気づくことがあります。これらは、見直しによって貯蓄に回せる可能性を秘めています。
- 不安の正体を知る: 漠然とした不安の多くは、実態が見えないことから生じます。家計の状況を数値で把握することで、不安の具体的な原因が分かり、それに対する対策を考えられるようになります。
2. 家計の現状把握の具体的なステップ
それでは、具体的にどのように家計の現状を把握していけば良いのでしょうか。以下のステップに沿って進めてみましょう。
ステップ1: 収入を正確に把握する
まずは、毎月どのくらいの収入があるのかを正確に把握します。特に重要なのは、会社から実際に振り込まれる手取り収入です。
- 手取り収入の確認: 給与明細を確認し、所得税や社会保険料などが天引きされた後の「差引支給額」を確認します。これが、実際に自由に使えるお金の額となります。
- ボーナスや臨時収入の扱い: ボーナスや臨時収入(副業収入など)は、月々の手取り収入とは別に管理することをおすすめします。これらを毎月の生活費に含めてしまうと、収入が不安定になり、家計管理が難しくなるためです。基本的に貯蓄や投資、あるいは特別な支出に充てる計画を立てると良いでしょう。
ステップ2: 支出を「見える化」する
収入が把握できたら、次に支出を把握します。支出は大きく分けて「固定費」と「変動費」に分類すると、管理しやすくなります。
- 固定費と変動費とは
- 固定費: 毎月ほぼ定額で発生する支出です。家賃、通信費(スマートフォン、インターネット)、保険料、サブスクリプションサービス(動画配信サービスなど)、奨学金の返済などが該当します。一度見直すと継続的な節約効果が期待できます。
- 変動費: 毎月金額が変わる支出です。食費、交通費、交際費、趣味・娯楽費、日用品費などが該当します。日々の行動に連動するため、意識的な管理が求められます。
- 支出の記録方法の選択肢
- 家計簿アプリ: スマートフォンで手軽に入力でき、銀行口座やクレジットカードと連携して自動で記録してくれる機能を持つものも多くあります。初心者の方にもおすすめです。
- スプレッドシート(Excelなど): 自身で項目を自由に設定でき、グラフなどで視覚化しやすいのが特徴です。
- ノート・手書きの家計簿: デジタルツールが苦手な方には、手書きで記録するのも有効です。記録する行為自体が支出への意識を高めます。
無理なく続けるためのポイント: * 完璧を目指さない: 最初から全ての支出を詳細に記録しようとすると挫折しやすくなります。まずは「食費」「交通費」「その他」など、大まかな分類から始めても問題ありません。 * キャッシュレス決済を活用する: クレジットカードや電子マネー、QRコード決済の利用履歴は、そのまま支出記録として活用できます。利用明細を定期的に確認する習慣をつけましょう。 * 記録のタイミングを決める: 毎日寝る前や週末にまとめて、など、ご自身の生活リズムに合わせて記録するタイミングを決めておくと習慣化しやすくなります。
ステップ3: 資産と負債を把握する(簡単なバランスシート)
最後に、現時点でいくらの資産があり、いくらの負債があるのかを把握します。これは個人の「バランスシート」のようなものです。
- 資産の洗い出し:
- 現金
- 銀行預金(普通預金、定期預金など)
- 証券口座にある資産(株式、投資信託などがあれば)
- 電子マネーの残高、ポイント(Tポイント、楽天ポイントなど)
- 負債の洗い出し:
- 奨学金の残高
- クレジットカードの未払い残高
- その他ローン(自動車ローンなど)
これらの情報を集めることで、ご自身の純資産(資産から負債を差し引いたもの)がいくらなのかを理解できます。
3. 現状把握で見えてきたことからの「目標設定」
家計の現状が把握できたら、次はその情報をもとに具体的な目標を設定します。目標が明確であればあるほど、貯蓄や節約、投資へのモチベーションを維持しやすくなります。
目標設定の重要性
「なんとなく貯める」のではなく、「何のために」「いつまでに」「いくら」貯めるのかを明確にすることが重要です。目標がないマラソンが途中で疲れてしまうように、お金の目標がないと、何を基準に頑張れば良いか分からなくなってしまいます。
目標設定の具体的な考え方
目標は、期間によって「短期」「中期」「長期」に分けて考えると整理しやすくなります。
- 短期目標(半年〜1年):
- 生活防衛資金(生活費の3〜6ヶ月分が目安)の確保
- 趣味や旅行のための資金
- まとまった家電の購入資金 など
- 中期目標(3年〜5年):
- 自動車の購入資金
- 結婚資金、引越し資金
- 自己投資(資格取得、留学など)のための資金 など
- 長期目標(10年〜):
- 住宅購入の頭金
- 老後資金
- 子どもの教育資金 など
具体的な目標の立て方:SMART原則
目標設定には「SMART原則」というフレームワークが役立ちます。
- S (Specific - 具体的に): 「貯金する」ではなく、「〇〇のために貯金する」と具体的にします。
- M (Measurable - 測定可能に): 「たくさん貯める」ではなく、「〇〇円貯める」と具体的な金額を設定します。
- A (Achievable - 達成可能に): 現実離れした目標ではなく、ご自身の収入や支出から見て無理なく達成できる目標にします。少し頑張れば届くくらいがモチベーションを維持しやすいでしょう。
- R (Relevant - 関連性): ご自身のライフプランや価値観に合った、意味のある目標にします。
- T (Time-bound - 期限を設ける): 「いつまでに」という期限を設定します。
例: 「半年後までに、緊急時のための生活防衛資金として15万円を貯める」 (S: 緊急時、M: 15万円、A: 半年間で達成可能か、R: 生活の安心に繋がる、T: 半年後)
4. 目標達成に向けた次の一歩
現状把握と目標設定ができたら、現状と目標との間にどれくらいのギャップがあるかが見えてきます。
例えば、毎月の手取り収入が20万円で、支出が18万円の場合、月に2万円貯蓄できる計算になります。もし半年で15万円貯める目標であれば、2万円×6ヶ月=12万円となり、3万円足りません。この3万円をどのように埋めるか、具体的に考える段階に進みます。
- 節約: 変動費を見直して支出を減らす。
- 貯蓄: 収入の一部を先取り貯蓄する仕組みを作る。
- 副収入: 余裕があれば、副業などを検討する。
これらの具体的な行動については、今後の記事で詳しく解説していきます。
おわりに:継続が未来を拓く
お金の不安を解消し、ご自身の望む未来を築くための道のりは、小さな一歩から始まります。家計の現状を把握し、具体的な目標を設定することは、まさにその第一歩です。
一度設定した目標や把握した現状は、時間の経過とともに変化するものです。定期的に見直し、ご自身のライフステージや状況に合わせて調整していくことが大切です。
焦らず、ご自身のペースで、一歩ずつ着実に進んでいきましょう。小さな継続が、やがて大きなお金の自信と豊かな未来へと繋がります。